2008年6月11日
沖電線株式会社
沖電線株式会社(本社:神奈川県川崎市、社長:服部 隆、以下 沖電線)は、このたび業界ではじめて自由な三次元形状を保持した配線を可能にする「立体形状フレキシブルプリント配線板(以下 「立体形状FPC」)」を開発し、本日より販売を開始します。
これまでのFPCは、電子機器の軽薄小型化や部品密度の高度化に伴う狭スペース配線に対応するため、やわらかさや低反発性を追求してきました。最近の電子機器業界では、機器内の他の部品に触れることなく、やわらかく低反発という特長を活かしつつ、筐体や組み込みスペースにジャストフィットで配線できる、立体形状のFPCが求められるようになってきました。沖電線では、比較的容易に成形できる従来のFPCとは全くことなる新素材を用いたことにより、この要求にこたえ、複雑な多分岐配線も可能な「立体形状FPC」の開発に成功しました。
今回、開発した「立体形状FPC」では、任意の角度での波形、凸凹、スパイラル、曲面など自由な形状デザインが可能です。波形や凸凹により、実装部品に触れることなく、空間をブリッジ配線させることや、機器内の多段に組み込まれた基板間をぬう立体配線が可能となります。スパイラル形状は360°全方向への可動が可能となり、新たな用途が期待できます。さらに曲面形状の応用により、新形態センサーモジュールの創出といった可能性も生まれてきます。
なお回路パターンなどは従来FPCと同様のデザインルールが適用でき、新たな制約もなく回路設計が可能です。
本製品は、日油株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:大池 弘一、以下 日油)が開発したグラフトポリマーを用い、沖電線と日油が立体形状FPCとして共同開発しました。優れた電気的特性(低誘電率2.5(注1)、低誘電正接0.001(注2))を有しており、マイクロ波クラスの高周波伝送回路形成も可能です。これにより、たとえば手術中のモニターなどの医療用の高精細な画像も対応可能となります。
当社は本製品を電子機器、医療機器、産業機器、車載機器などの市場に向けて積極的に販売していきます。
なお、本製品は6月11日(水)から6月13日(金)まで東京ビックサイトにて開催される「JPCA Show 2008」に出展します。
販売時期:2008年 6月11日(試作対応開始)
販売目標:10,000本/月(量産時)
販売価格:仕様による
項目 | 仕様 |
---|---|
フレキ長(最大) | 500mm |
フレキ幅(最大) | 230mm |
FPC厚み(最小) | 110µm |
導体幅(最密) | 50µm |
層構成 | 2層(両面) |
ベース材料 | 銅箔18µm、基材(新素材)40µm~ |
絶縁材料 | カバーレイ(ポリイミド)、インク(エポキシ系、ポリイミド系) |
表面処理 | 金めっき、半田めっき、他 |
誘電率とは、誘電体(プラスチック)内部に電束が発生する程度を表す値であり、信号の伝播速度と密に関係し、誘電率が低いと高周波での伝送特性が優位になります。
一般に、真空の誘電率との比である比誘電率で表します。
比誘電率の例では、テフロン2.1、ポリイミド3.5であり、本材料(2.5)はテフロンに近い物性を示します。
誘電正接(tanδ=デルタ)とは絶縁体内部での電気エネルギーの損失の度合であり、高周波での伝送損失はtanδと比例関係になるので、tanδが低いと高周波での伝送特性に優位になります。
tanδの例では、テフロン0.001、ポリイミド0.015であり、本材料(0.001)はテフロン相当の物性を示します。