ワイヤ放電加工機用電極線

 

ワイヤの材質・構造について

黄銅はその組成によって多様な特性を示し、用途も様々です。
電極線分野では主に65/35と呼ばれる黄銅と60/40と呼ばれる黄銅の2種類が用いられます。
これらの黄銅は、その成分の違いによりワイヤ特性や放電加工特性が異なります。
下表に一般的な傾向を示します。

組成の違いによる特性対照表

略称 65/35黄銅 60/40黄銅
組成 JIS規格番号 H3260 C2700W H3260 C2800W
主な成分
(標準値)
Cu 65% 60%
Zn 35% 40%
該当シリーズ OB-POB-PN OB-PZOB-PZN
引張強さ 大きな差異はありません
真直性 大きな差異はありません
加工速度 - 速い(※1)
面粗さ - 良い(※1)
経時変化(※2) 変化しにくい -
  • ※1同加工条件における一般的な傾向であり、加工環境によって異なります。
  • ※2時間の経過とともにワイヤの真直性(巻き癖)が悪化する現象をいいます。

焼鈍熱量のイメージ図

電極線は伸線加工により加工硬化し、真直性(カール率)が悪くなります。
そのため、加工硬化を回復させるために製造過程に熱処理工程を設けています。
熱処理工程において焼鈍熱量を調整することにより、電極線の引張強さ、伸び、真直性などの特性を調整することができます。
このとき、比較的小さな焼鈍熱量域で熱処理を施した電極線を硬質ワイヤ、比較的大きな焼鈍熱量域で熱処理を施した電極線を軟質ワイヤと呼びます。

硬質ワイヤは汎用加工に広く用いられ、軟質ワイヤはテーパー加工に最適です。硬質ワイヤでテーパー加工を行うと、ワイヤの弾力性によりたわみが生じてしまうため、広角テーパー加工には軟質ワイヤを推奨しています。

硬質ワイヤと軟質ワイヤの特長と用途

タイプ 硬質ワイヤ 軟質ワイヤ
特長 弾性がある 延性がある
用途 汎用加工 広角テーパー加工
該当シリーズ OB-POB-PN
OB-PZOB-PZN
OB-B

加工中のたわみ


  • 硬質ワイヤの場合

  • 軟質ワイヤの場合

パラフィンは無色透明の炭化水素化合物で、ワイヤ表面に塗布することで一定の潤滑性が得られます。
OKI電線ではパラフィンを塗布したワイヤをパラフィンワイヤ、塗布していないワイヤをノンパラフィンワイヤと呼んでいます。
パラフィンの有無については放電加工機により推奨が異なるため、ご使用の際には確認が必要となります。

パラフィンワイヤの特長

表面にパラフィンを塗布したワイヤで、潤滑性が高く走行ライン上で黄銅粉が発生しにくい特長があります。

ノンパラフィンワイヤの特長

表面にパラフィンを塗布していないワイヤで、潤滑性が低く走行ライン上でスリップが発生しにくい特長があります。

亜鉛被覆ワイヤとは

黄銅ワイヤの表面に亜鉛層を有するワイヤを亜鉛被覆ワイヤといいます。
亜鉛は黄銅よりも放電特性が良好であるとされていますが、亜鉛のみの単層ワイヤは製造が困難であるため、一般的には黄銅表面に亜鉛をめっきする方法が用いられます。
また、中心層に黄銅を用いることで黄銅ワイヤと同等の使い勝手や作業性を維持することができます。
亜鉛被覆ワイヤは、黄銅ワイヤに比べて荒加工時の加工速度が大きく、仕上げ加工時の面粗さが良い傾向があり、また、被加工物への銅付着が少ないという特長もあります。

OKI電線の亜鉛被覆ワイヤ

  • OS-Zシリーズ

    OS-Zシリーズは、黄銅の表面に亜鉛層を有する一般的な亜鉛被覆ワイヤです。
    黄銅ワイヤに比べて加工速度と面粗さが向上します。

  • OS-UZシリーズ

    OS-UZシリーズは中間に銅亜鉛拡散層、外層に亜鉛層を有する、速度性能に特化したワイヤです

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