当社ではケーブルとFPCそれぞれを取り扱っています。
どちらも電気をつなぐという同じ機能を持っていますが、ケーブルとは使用される場面が異なります。
たとえば、配線スペースが狭くケーブルでは配線できない場合や、FPCを使用することで工数や部材を削減でき、トータルコストが安価になる場合などにFPCは使用されます。
本ページでは、初めてFPCをお使いになる方向けに、ケーブルとFPCの違いを解説します。
FPCの概要はこちらをご覧ください。⇒ フレキシブル基板(FPC)とは
FPC(片面FPC)とケーブル(ORPスリムケーブル)の構造の違いを下記に示します。
FPC(片面FPC) | ケーブル(ORPスリムケーブル) | |
---|---|---|
外観 | ||
断面構造例 | ||
導体 | 銅箔 | すずめっき軟銅撚り線 |
絶縁材質 | 絶縁フィルム:ポリイミドなど 接着剤:エポキシ系など |
シース材:耐油性PVC 絶縁体:特殊エラストマー |
厚み | 0.05~0.2mm程度 | 3.2φ~14.5φ |
ケーブルとFPCはどちらも導体として銅を用いており、導体を何らかの絶縁材料で保護する構成は同じです。
しかし、ケーブルは、1本毎の導体を絶縁し、それを撚り合わせて形造られた立体的な形状の構造である一方、FPCは銅箔の導体を絶縁フィルムで挟み込んだ平面的な形状の構造となっています。また、FPCの絶縁材料としては、耐熱性や絶縁性に優れるポリイミドフィルムとエポキシ系の接着剤を用いることが一般的で、はんだによる部品実装時の熱にも耐えることができます。
FPCは標準的な厚みが0.1mm程度であり、ケーブルと比較して薄い構造となっています。そのため、柔軟性に優れ、折り曲げて使用することもできます。また、ケーブルよりも狭スペース下での耐屈曲性(摺動屈曲)に優れているため、可動配線部の省スペース化を実現できます。
FPCの耐屈曲性についてはこちらをご覧ください。⇒ 耐屈曲性について
ケーブルはAWGサイズ、芯数、構造などが異なる様々な標準品をラインアップしています。しかし、FPCの場合は、ご要求の仕様に合わせて設計、製造するカスタム製品が基本です。そのため、形状や仕様は下記にご紹介するようにある程度自由に設計することが可能です。
様々なFPC例
FPCの厚みは、標準的な厚み構成から、より薄い構成や、より厚い構成が選択可能です。たとえば、柔軟性や耐屈曲性を向上させるために薄い銅箔を選択したり、許容電流を増加させるために厚い銅箔を選択するなど、ご要望の特性に応じて構成材料の厚みを使い分けることが可能です。
当社のFPC材料の厚みについてはこちらをご覧ください。⇒ 当社FPC材料の一例
FPCの導体はエッチング加工によって必要な導体形状を形成するため、自由に設計できます。
たとえば、導体の幅は必要な許容電流に応じて、任意の幅に自由に設計が可能です(最小幅は0.1mm程度)。
また、FPC内に幅の異なる導体を形成できるため、FPC1枚で電源線と信号線を配線することができます。
FPCの外形は金型などで打ち抜いて加工するため、自由に設計できます。
長方形の単純な外形形状から、FPCの設置個所に合わせるための複雑な外形形状など様々な形状に対応できます。
FPCは各種コネクタからLEDなどの機能部品の搭載が可能です。ケーブルとは異なり機能部品を搭載できるため、単純な接続用途だけでなく、様々な機能をFPCに持たせることが可能です。
LED実装例
FPCはケーブルと同様にコネクタによる接続が可能です。
ケーブル用のコネクタは使用できませんが、プリント基板用のコネクタや、FPCコネクタを使用できます。
また、はんだや、ねじ止めによる接続も可能です。
FPCは付帯物の貼り付けが可能です。たとえば、筐体などにFPCを貼り付けるために、あらかじめFPC側に両面テープを貼っておくといった加工や、電子部品の実装箇所など部分的に剛性を高めるために補強板を貼り付ける加工などが可能です。
補強板についてはこちらをご覧ください。⇒ 補強板の必要性(実装部)
FPCは基本的に、ご要求の仕様に合わせて設計、製造する製品のため、製品代とは別にイニシャル費が発生します。イニシャル費はFPCの設計費用とFPCを製造するためのツール費用(金型など)が含まれており、製作するFPCの仕様や数量によって費用が変わります。当社では、試作の際にフライングチェッカーやレーザー加工といった設備を使用してFPCを製造することでツール費用を削減し、イニシャル費を安価にすることが可能です。